お盆の行事には、「迎え火・送り火」という風習があります。
言葉は聞いたことはあっても、何をするのか曖昧な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、この記事では
- 迎え火と送り火の大切な意味
- 迎え火と送り火を行う日程や時間帯
- 送り火に必要なものと正しいやり方
などの基本的な知識をまとめてご紹介します。
「迎え火・送り火」を初めて行う方でも安全にできるやり方をみていきましょう。
お盆の迎え火・送り火とは?
お盆とはご先祖様を供養する行事の一つですが、ご先祖様の魂が「あの世」と呼ばれている浄土から、「この世」に戻って各家庭へ帰ってくる時期とされています。
その際、道に迷わずに戻ってこられるように目印として、玄関先や庭などで迎え火を焚いてお迎えします。
そして、お盆を共に過ごした後に、ご先祖様の魂が無事にあの世に戻れるよう願いを込めて焚くのが送り火です。
魂は送り火の煙に乗ってあの世に還るとされ、迎え火を焚いた同じ場所で火を焚きお見送りをします。
また、送り火が地域によっては京都市の「五山の送り火」のように大規模な伝統行事となっていることも。
長崎県などの地域では、火を灯した灯籠をお盆のお供え物などと一緒に海や川に流す「精霊(しょうろう)流し(地域によっては灯籠流し)」が行われます。
魂が灯籠に乗って川を下り、海の向こうにあるあの世へ帰っていくといわれ、厄除けの意味もあるそうですよ。
このような行事のある地域では、各家庭での送り火が行われていないこともあります。
迎え火・送り火の日にちと時間
一般的にはお盆の初日8月13日の夕方に迎え火を、8月16日の夕方に送り火を焚きます。
ただしお盆の期間は必ずしも8月ではなく、地域によって違うため注意が必要です。
東京都(一部地域を除く)、南関東(主に都市部)、静岡旧市街地、函館、金沢旧市街地、熊本市の一部の地域などは7月13日〜16日。
沖縄県や鹿児島県の奄美地方では、旧暦7月13日〜15日の3日間(現在の暦では8月中旬〜9月上旬)がお盆の期間にあたります。
そのため、それぞれのお盆期間の初日に迎え火を焚き、最後の日(前日の地域もあり)に送り火を焚くことになります。
時間に絶対的な決まりはありませんが、ご近所への配慮から17〜19時くらいまでに焚くのが一般的です。
ただし、同じ時間帯でも各地での明るさが違いますから日没から準備し、暗くなってきたら火を焚くと良いでしょう。
よくわからない場合は、近隣や地域の方に尋ねてみることをおすすめします。
迎え火・送り火のやり方
では、どのように行うのか具体的にみていきましょう。
地方によってやり方はさまざまですが、一般的な流れをご紹介します。
準備するもの
地域のお祭りや伝統行事として迎え火や送り火が行われる所もありますが、家庭で行う際に必要なものは主に以下の3つです。
<おがら(麻幹・苧殻)>
おがらは、麻の皮を剥いだ茎の部分を乾燥させたものです。
麻は古来から清浄な植物とされ、これを焚くことで悪いものを祓い清め、清浄な空間へご先祖様の魂を迎え入れるという意味合いがあります。
おがらは迎え火のほかに、精霊馬(キュウリやナスなどを馬や牛に見立てて作るお盆のお供え物のひとつ)の脚としても使われることも。
お盆の時期になると、スーパーや花屋、ホームセンターなどで安いものだと10本で150円前後で売られています。
手に入らない時は、割り箸で代用できますよ。
また、地域によってはおがらではなく松明(たいまつ)や、カンパ(白樺の皮)を用いる場合もあるようです。
<焙烙(ほうろく)>
素焼きの平皿で、この上におがらなどを乗せて火を焚きます。
直径24センチ(8寸)程度の物が多く用いられますが、焙烙を使うことで地面を汚すこともなく後片付けも楽になります。
最近は、ネット通販でおがらや炮烙などがセットになったものがありますので、これを活用するのもおすすめです。
手に入らない時は、耐熱性の平皿で代用できますし、大き目の灰皿を使ってもよいでしょう。
<盆提灯(ぼんぢょうちん)>
盆提灯は、ご先祖様が迷わず家に帰ってくる目印に飾るものです。
もともと「迎え火」を目印としていましたが、のちに火を提灯に移して魂をもてなす風習となったのが盆提灯の始まりだといわれています。
そのため、住宅事情から迎え火や送り火を焚けない場合には、盆提灯がその代わりとなります。
また、ご先祖様を偲び感謝を表すお供え物としての役割もあります。
盆提灯の飾る時期として、お盆に入った月の初めから飾っても問題ありませんが、点灯するのは迎え火・送り火のタイミングが良いでしょう。
点灯時間の長さは特に決まりはありませんが、迷う場合は、地域の風習を確認してみることをおすすめします。
盆提灯は、大きく分けて、吊るすタイプ、置くタイプのもの、またコンセントを指して使う電気式のものや、電池式など、さらに大きさもさまざまな種類があるので、お住まいの環境に合わせて選びましょう。
ちなみに四十九日の忌明け後、初めてのお盆には白提灯を飾ります。
場所と手順
「迎え火・送り火」とも、自宅の間口(道路が面している場所)か玄関先で火を焚くのが一般的です。
昔は、迎え火は、お墓参りの際に焚いた火を手持ちの提灯のローソクに移して家へ運んで火を焚き、送り火は、仏壇のローソクの火を手持ちの提灯に移してお墓まで行き火を焚いていました。
現在はこのような方法は少なくなってきています。
迎え火と送り火のやり方は一緒です、以下の手順で行うと良いでしょう。
1.おがらを焙烙のサイズに合わせ、適当な長さにカットする
2.焙烙の上に、積み上げるようにおがらをのせ火を点ける
3.火が点いたら手を合わせ、おがらが燃え尽きるまで見届ける
4.火が消えたら水をかけて火の始末をしてから片づける
もし火が点きにくい場合は、積み重ねたおがらの下に空間を作り、新聞紙などの紙をちぎってその中に入れ、種火とすることをおすすめします。
また、くれぐれも燃えやすいものの近くではやらないようにし、あらかじめバケツに水を入れておきましょう。
風が強い日などは安全な場所を選ぶことをおすすめします。
火を焚いて合掌している間には、「この火を目印に家にお帰りください」「どうぞ気をつけてお帰りください」などとお祈りすると良いでしょう。
なお、火を焚くことが身近だった昔と違い、現在は防火上の理由で火を焚くことが難しい住居や地域が増えています。
特にマンションやアパートなどでは、玄関先で火を焚くことはできませんよね。
もし、火が燃え移らないくらいの広いベランダがあり、ご近所の迷惑にならないようでしたら、おがらの量を少なくして行うのも良いと思います。
ただし、無理に火を焚く必要はありません。
形だけにしてもいいですし、前述したように盆提灯を灯すのもよいでしょう。
盆提灯を持ち玄関先で一礼し黙祷することで、送り火・迎え火の代わりとすることもできます。
迎え火・送り火の地域や宗派の違い
先ほどは、迎え火・送り火の一般的なやり方を紹介しましたが、地域によってさまざまなやり方があったり、そもそも行わないところもあります。
ここでは、風習の一例をご紹介します。
東京の一部の地域では、灰になったおがらの上をまたぐという風習があり、家の玄関から外の方へ向かって、3回またぐのが良いといわれています。
中には1回のみだったり、またぐ際にお経や地域に伝わる言葉を唱えるところもあるとか。
これは、おがらに魔除けの効果があるとされていることから、またぐことで無病息災や厄除けを願うものです。
また、神奈川県の一部では、おがらや焙烙は使用せず「砂盛り」と呼ばれる送り迎えの風習があります。
器や箱に砂を盛り、その上に竹筒を立ててお線香を焚いたり、一緒にお花や精霊馬、ホオズキなどを供える形が一般的ですが、家庭によって盛り方はさまざまです。
砂盛りの多くには、帰ってくるご先祖様のために、はしごがかけられています。
独特の風習を受け継いでいる場合もありますから、気になる方は一度、地域の詳しい方に確認すると良いかもしれませんね。
なお、浄土真宗では迎え火や送り火は行いません。
人は誰でも亡くなると浄土に往生し仏様になるとされ、お盆の時期にこの世に帰ってくることはないと考えられているからです。
まとめ
ここまで、お盆時期に行われる迎え火・送り火について、日時ややり方などをお伝えしてきました。
最後に、押さえておきたいポイントを一緒におさらいしてみましょう。
<迎え火・送り火の日にちと時間>
・お盆の初日8月13日の夕方に迎え火、8月16日の夕方に送り火を焚く、時間は17時〜19時が一般的
・下記のようにお盆期間が違う地域があるが、それぞれのお盆期間の初日に迎え火を焚き、最後の日(前日の地域もあり)に送り火を焚く
東京都(一部地域を除く)、南関東(主に都市部)、静岡旧市街地、函館、金沢旧市街地、熊本市の一部の地域などは7月13日〜16日
沖縄県や鹿児島県の奄美地方では、旧暦7月13日〜15日の3日間(現在の暦では8月中旬〜9月上旬)
<迎え火・送り火に準備するもの>
・おがら(地域によっては松明、カンパ)
・焙烙
・盆提灯
<迎え火・送り火の手順>
1.おがらを焙烙のサイズに合わせ、適当な長さにカットする
2.焙烙の上に、積み上げるようにおがらをのせ火を点ける
3.火が点いたら手を合わせ、おがらが燃え尽きるまで見届ける
4.火が消えたら水をかけて火の始末をしてから片づける
送り火や迎え火には、地域によって違いはありますが、ご先祖様のことを大切に想って引き継がれてきた風習だといえます。
もし日にちや時間の都合がつかない場合でも、ご家族が集まって心を込めて行えばご先祖様もきっと喜んでくださるはず。
年に一度のお盆には、ご先祖様をお迎えしてゆっくり向き合う時間を大切にしたいものですね。