故人が亡くなられてから初めて迎えるのが「初盆」ですが、お盆に行われる供養の一つに「お盆飾り」があります。
普段から馴染みがないと、何を用意してどう飾って良いかわからないですよね。
そこでこの記事では
・通常のお盆と初盆の飾り方の違い
・用意するものとその意味
・基本的なお盆飾りの飾り方
・宗派による飾り方の違い
などについて詳しくお伝えしていきますので、ぜひ最後までご覧くださいね。
初盆とお盆飾りをする期間
故人が亡くなられてから四十九日後に迎えるお盆を「初盆(はつぼん、ういぼん)」または「新盆(しんぼん・あらぼん・にいぼん)」と言います。
そのため四十九日前にお盆が訪れる場合は、翌年が初盆となります。
お盆の期間は一般的に8月13日〜16日の4日間のところが多く、東京都(一部地域を除く)や南関東などの地域では7月13日〜16日、沖縄県などのように旧暦7月13日〜15日の3日間(現在の暦では8月中旬〜9月上旬)とする地域もあります。
初盆と通常のお盆との違いは、初盆は故人が亡くなられてから初めての里帰りということになりますので、より手厚く盛大に行うということです。
通常のお盆には法要を行わないことが増えていますが、初盆の場合は法要を行ってその後に集まった方々と会食するのが一般的。
また、お仏壇にお参りするだけではなく、お盆飾りをすることが習慣とされています。
これらは「盆棚」「精霊棚(しょうりょうだな)」と呼ばれ、お盆の期間に飾ってご先祖様の魂をもてなします。(一部の宗派を除く)
準備から後片付けまでの流れは通常のお盆と変わらないので、詳しくはこちらの記事を参考にしてくださいね。
お盆飾りに用意するものとその意味とは?
お盆飾りに用いられるものには、そのひとつひとつに意味が込められています。
ここでは、代表的なお飾りの意味をご紹介します。
<提灯>
あの世から帰ってくるご先祖様の魂が、迷わずに家にたどり着けるように飾るのが盆提灯です。
基本的に家紋や絵柄のついたものを用意しますが、初盆を迎える場合は、そのほかに「白紋天(しろもんてん)」という白い提灯も用意します。
白紋天は軒先に吊るすのが伝統ですが、最近は防犯上の理由から部屋の窓際や仏壇の前に置くことも多くなっています。
<真菰(まこも)>
薬用成分を含んでいる植物であることから、お釈迦様は、真菰の敷物に病人を寝かせ治療したという言い伝えがあります。
その名残から盆棚(精霊棚)に真菰を敷き、その上にお飾りをするようになりました。
また、真菰は病を癒す、邪気をはらう霊草として昔から大切に扱われ、現在でも神社の祭事に使われています。
<精霊馬・精霊牛>
キュウリとナスを馬と牛に見立てて作った「精霊馬(しょうりょううま)」と「精霊牛(しょうりょううし)」は、ご先祖様を乗せて、あの世と私たちの世界の送り迎えをするという意味があります。
家に戻ってくるときは早く駆ける馬に乗り少しでもこちらで長い時間を過ごしていただきたい、帰りは牛に乗ってゆっくりと戻っていただきたいという願いが込められています。
また、帰りはお供え物を持ち帰るため、荷物をたくさん積める牛を用意するという意味もあるそうです。
<鬼灯(ほおずき)>
鬼灯はその色と形から、自然界の提灯として飾られるようになりました。
ご先祖様をお迎えする気持ちを表す欠かせない飾りのひとつとされています。
盆棚(精霊棚)に張ったしめ縄に吊り下げたり、盆花と共に活けたり、他のお供え物と並べたりとさまざまな形で飾ることができます。
<水の子>
お盆飾りのお供えのひとつで、お盆の間は毎日取り替えます。
細かくサイの目に切ったナスとキュウリに洗ったお米を混ぜ、水を含ませて蓮の葉を敷いた器に盛りつけるのが一般的です。
水の子のいわれには、ご先祖様が渇いた喉を潤せるように、または、前世に悪事を犯して餓鬼道に落ちた亡者を渇きと飢餓から救うという意味が込められているなど諸説あるそうです。
<閼伽水(あかみず)・みそはぎの花>
閼伽水とは器にきれいな水を入れたものですが、その器の側に5〜6本束ねたみそはぎの花を添えて飾ります。
閼伽水には、ご先祖様の魂があの世から戻ってこられるときに一緒に付いてきた悪霊を取り払うという意味が込められています。
また、みそはぎは漢字だと「禊萩」となりますが、禊(みそぎ)に使われていたことがあり、宗派によっては、水の子にみそはぎで水を振り掛けてお清めをするという役割があるそうです。
<盆花>
お盆の時期に盆棚(精霊棚)にお供えする仏花を、盆花(ぼんばな)と呼ぶこともあります。
初盆で飾るお花は菊・ユリ・トルコキキョウなどの、白くて淡い色のお花が定番となっていますが、他にはみそはぎや、女郎花(おみなえし)、なでしこなどが使われるのが一般的です。
ただし、難しく考えないで基本的には季節の花を選べば大丈夫ですし、手に入りにくい場合は、故人が生前好きだった花を飾っても良いでしょう。
生花を使うことの多い盆花ですが、金銀の紙で作られた造花の盆花をお供えする地域もあります。
<素麺(そうめん)>
素麺をお盆飾りとするいわれには諸説あり、地域によっても異なります。
ご先祖様が乗って帰ってくる馬の手綱や、戻られるときに沢山のお土産などの荷物をくくる紐に見立ててお供えします。
また、細長い糸のような形をしていることから、幸せや喜びが細く長く続くという縁起をかつぐ意味があるとか。
さらに、平安時代に宮中の七夕行事でも「熱病除け」としてお供えされていた習慣から、疫病の予防の願いを込めてお盆のお供え物にも取り入れられたという説があります。
<団子>
お盆にお供えする団子には、ご先祖様をお迎えする、疲れを癒す、おもてなしをする、お見送りするなどの意味があります。
お盆の初日には「迎え団子」といってご先祖様をお迎えし旅の疲れを癒す意味で供えますが、あんこやきなこ、みたらしなどの甘い味付けの団子を用意する地域が多いようです。
14日と15日の中2日に供える「お供え団子」は、おもてなしのための団子です。
お供え団子の代表的なものに「おはぎ」がありますが、味のついたものや白団子など地域によってそれぞれ違いがあります。
お盆明けの16日にお見送りをするためにお供えする「送り団子」には、あの世にお土産として持ち帰るという意味が込められ、帰ったあとに好きなように食べていただくため、味を付けない白団子を供えることが多いようです。
なお、初盆は白団子が一般的だとされています。
<夏の野菜や果物>
季節の野菜や果物などをお供えするのは、長旅でお腹をすかせたご先祖様を供養するためといわれています。
基本的にはお盆中供えておけるように日持ちしやすいものを選びましょう。
なお、スイカやメロンのように丸い形をしたものは、「円=縁」ということから縁起が良いと考えられています。
初盆の盆棚(精霊棚)の飾り方
お盆の間は、盆棚(精霊棚)に、お仏壇から出した位牌を並べることから、この場所にご先祖様の魂が滞在するとされています。
盆棚(精霊棚)には1枚の板の四隅を支柱で支えるタイプと、ひな壇型の2つのタイプがあります。
本来は二段もしくは三段のひな壇型の飾り棚を準備するべきといわれますが、現代では住宅事情やライフスタイルの変化から簡略化されたり、初盆だけ飾るというケースも増えているようです。
ここでは基本的な仏壇前や横へ置く飾り方を例にご紹介しますね。
- 盆棚(精霊棚)に、真菰(まこも)のゴザを敷いて棚の周りの四隅に青竹や笹竹を立て、その上にしめ縄を張り巡らせて結界を作る
- しめ縄には、鬼灯(ほおずき)や素麺などを吊るす
- 仏壇の中にある位牌を取り出し、一番奥中央に並べる
- 手前に、花立て・香炉・燭台などのお参りの道具を並べる
- お線香・ローソク・お花に加え、精霊馬や精霊牛、水の子、季節の果物、故人の好物だったものなどを供える
- 盆棚(精霊棚)の左右の端に盆提灯を飾り灯りをともす
一方、ひな壇形の場合には、真菰(まこも)のゴザや金襴(きんらん)を敷き、最上段に位牌を置いてお供え物を並べていきます。
また、お仏壇の扉は閉めても閉めなくてもどちらでも良いそうです。
盆棚(精霊棚)は仏壇店やホームセンターなどで用意できますが、四十九日の後飾り壇を取っておいて使われる方もいらっしゃいます。
既製品でなくても大丈夫ですから、机を重ねたり並べたりして代用したり、小さな台などを活用しつつ、心を込めてご先祖様をお迎えしましょう。
盆棚・精霊棚を飾るスペースがない場合
スペースがない場合は、お仏壇に直接お供えをしても構いません。
その場合は、お仏壇が盆棚(精霊棚)を兼ねますので、スライド式の棚板や小さい机を利用し、その上に真菰(まこも)のゴザを敷いてお供え物やお花、精霊馬などの簡易なお飾りをするのも良いでしょう。
最近はお仏壇もモダンでコンパクトなものなどが多く、それに合わせたお盆飾りを用意される方が増えてきています。
大切なのは、ご先祖様をお迎えし供養する気持ちなので、規模や飾る品々にあまりこだわる必要はありません。
特に欠かせない飾りや棚などがセットになったものもお手頃な価格で販売されていますので利用してみてはいかがでしょうか。
宗派での飾り方の違いと注意点
ここまでは一般的な初盆の飾り方を紹介してきましたが、宗派によって飾り方のしきたりが少し違いますので、確認しておきましょう。
ちなみに、前述した白提灯についてはどの宗派でも共通です。
<浄土宗>
盆棚(精霊棚)に真菰のゴザを敷いて、位牌、ご本尊、仏具、野菜、果物などを並べます。
盆棚(精霊棚)に飾っている間は、お仏壇の扉は閉めておきます。
お供え物として、故人の好きだった嗜好品は置かないのが浄土宗の特徴です。
<曹洞宗>
盆棚(精霊棚)に白い布を掛けること、そして麻幹(おがら・麻の皮を剥いだ茎の部分を乾燥させたもの)で作った7段もしくは13段の梯子(はしご)を、棚と床の間に架けるのが特徴です。
梯子は棚にご先祖様が上るためにかける物といわれています。
また、必ず「水の子」をお供えします。
<真言宗>
「精進料理」をお供えすることが他の宗派にはない独特の風習です。
また、お供えする果物や野菜などは、皮をむき一口サイズに切ってそのまま食べられる状態にしてお箸と一緒にお供えします。
<日蓮宗>
お仏壇の両脇に青竹を立てるのが特徴です。
お仏壇の最上段の中央に日蓮大聖人の像を置いて、奥に曼荼羅(まんだら)をかけ手前に盆棚(精霊棚)を配置します。
<浄土真宗>
初盆を含めお盆の時期に特別なことはしません。
人は死後の世界では誰でも仏様となり、ご先祖様がお盆の時期に家に戻られるという考え方がないからです。
ただし、盆提灯を飾ることに関して制限はありません。
<神道>
仏教でのお仏壇に当たる祖霊舎の前に盆棚(精霊棚)のような、神道の祭壇を作るのが一般的です。
仏教と同様に飾りつけを行いますが、お米や日本酒、塩、海鮮物などもあり、榊(さかき)をお供えすることも違う点となります。
まとめ
ここまで初盆のお盆飾りについてお伝えしてきました。
盆棚(精霊棚)という特別な場所にお盆独特の飾り物やお供え物などを置き、初盆のときは、これに加えて白提灯をともすのが一般的ということですね。
お盆飾りの飾り方も宗派などによって違いますが、基本的なポイントを最後におさらいしてみましょう。
【用意するもの】
提灯
真菰(まこも)
精霊馬・精霊牛
鬼灯(ほおずき)
水の子
閼伽水(あかみず)・みそはぎの花
盆花
素麺(そうめん)
団子
夏の野菜や果物
【盆棚(精霊棚)の飾り方】
- 真菰(まこも)のゴザを敷いて棚の周りの四隅に青竹や笹竹を立て、その上にしめ縄を張り巡らせて結界を作る
- しめ縄には、鬼灯(ほおずき)や素麺などを吊るす
- 仏壇の中にある位牌を取り出し、一番奥中央に並べる
- 手前に、花立て・香炉・燭台などのお参りの道具を並べる
- お線香・ローソク・お花に加え、精霊馬や精霊牛、水の子、季節の果物、故人の好物だったものなどを供える
- 盆棚(精霊棚)の左右の端に盆提灯を飾り灯りをともす
共通するのは、お盆飾りの飾りやお供えには一つ一つに意味があり、ご先祖様を大切にし供養したいという想いが宿っているということですね。
初盆のお盆飾りの参考にしてもらえると幸いです。