ご先祖様を供養する方法の1つとして、お仏壇にお供え物をするというものがあります。
お仏壇には近親の故人はもちろん、ご先祖様や仏様が宿っているという考え方から、お供え物をすることによって、感謝の気持ちや供養の気持ちを表すことが出来るのです。
しかし、普段からあまりお供え物などに馴染みのない方には「そもそも何を選べばいいのか?」という問題を始め、色々と疑問もあることでしょう。
本記事では、あまりお供え物をする機会がないという人にも分かりやすく、お仏壇にお供え物するには何がいいのか、また、選び方の基本的な考え方なども合わせてお伝えしていきます。
ぜひお供え物の選び方の参考にしていただければと思います。
お仏壇とはそもそもどんな意味があるのか
まず、あまり先祖供養の習慣などがない方は、なぜお仏壇があるのか?どんな意味を持っているのか?という部分について疑問に感じるかもしれません。
お仏壇が持っている意味を知れば、合わせてお供え物の意味も分かりやすくなりますので、まずはお仏壇について少しだけ解説させていただきます。
お仏壇には「小さなお寺」という意味があります
冒頭でも紹介しましたが、お仏壇とは名前の通り、仏様を祀るものでもあります。
このため、お仏壇は仏様を祀っているお家の中のお寺という意味が込められているのです。
供養という概念は日本独特の祖霊信仰と呼ばれる文化や、ご先祖様を敬う文化が入り混じったものですが、日本に仏教が伝わるとこれらの文化が融合して、お仏壇という形になりました。
つまり、お仏壇へお供え物をするということは、仏様にもお供え物をするということになります。
ご先祖様たちの家という意味も
もう1つ大切な意味としては「ご先祖様さまたちの家である」というものがあります。
「ご先祖様たちはお墓にいるんじゃないの?」と思われる方も多いですが、仏教では本来、亡くなった方の魂は一部に留まりません。
これはあの世やこの世をさまよいながら新しく生まれるという「輪廻転生」という考え方があるからです。
身近なものであれば「お盆はご先祖様が帰ってくる期間」だと聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
生前の家や土地で魂になっても安らかに過ごせるように、お仏壇は置かれていることが多いのです。
こういった様々な意味から「お仏壇にお供え物をする」という習慣が出来たというわけです。
お仏壇へお供え物をするには何がいいのか?
では、本題であるお仏壇へのお供え物とは何がいいのか?という疑問にお答えしていきます。
お供え物の選び方は、自宅でお仏壇などを受け継いでお供え物をする場合と、お仏壇のあるご実家やご親族の方のお家にお供え物を持っていくという場合という大きく2つのケースに分けられます。
根本的な意味合いは、「仏様とご先祖様に感謝と供養の心を込めてお供えをする」ということに変わりはありませんが、基本的なマナーや風習などもありますので、合わせて覚えておくと良いでしょう。
お仏壇のある家に持っていくお供え物の選び方や種類
お仏壇用にお供え物を選ぶという場合は、ご実家や親戚などのお家に伺ってお供え物をするというケースが多いかと思います。
こういった外部に持ち込むお供え物は、お仏壇を置いて管理、供養に努めているご親族にも、仏様やご先祖様に対しても失礼にならないように選ぶ必要があります。
具体的にどんなお供え物を選ぶのかを、以下で種別ごとに紹介していきます。
①現金(御供物料)
四十九日法要やお盆などのお供え物としては「現金」を用意することがあります。
先に紹介したように、お仏壇とは「小さなお寺」という意味もありますので、現金をお供えすることは、地域によってお布施という意味も込められています。
現金でのお供え物は一般的に「御供物料」と呼び、自分自身の年齢に合わせて準備するのが礼儀の1つです。
地域差はありますが、故人との縁が深かったりした場合には少し金額を多めに包みます。
※お供え物としての現金の相場は5000円~最大で5万円ほどです
現金をお供え物にする時の注意点としては、奇数の金額でお包みすることや現金を包む「水引」の色などが挙げられます。
偶数の金額は「割り切れる」という意味から故人との縁切りを連想させるため、縁起の良くないものとされています。
水引には「御供物料」と書いた上で、色は地域の風習などに合わせましょう。
②果物
お供え物としては「丸い果物」も良いものとされています。
季節に応じた果物を選んでお供え物とすることが多いですが、こちらも数は奇数で合わせるのが一般的です。
また、果物を選ぶ場合にはなるべく日持ちのしやすい物を選びましょう。
果物の中でもイチゴは特に痛みやすいため、お供え物としてはあまり向いていません。
また、バナナなどは地域にもよりますが香りが強く避けられる傾向にもあります。
デパートや果物屋さんなどで「お供え物用のフルーツ」とお願いすると、奇数でバランスの良いお供え物をセットで提案してもらえることも多いです。
③お菓子
お供え物としてポピュラーなものとしてはお菓子も含まれます。
故人の好きだったお菓子をお供え物とすることも良いのですが、こちらも果物と同様に丸いものが縁起が良いとされています。
生菓子などは痛みやすいため、常温保存が可能なお菓子を選ぶと良いでしょう。
お仏壇に供えるからという意味で、和菓子でなければいけないという考え方も一部ではありますが、基本的には和菓子でも洋菓子でも特に問題はないとされています。
④お花
お仏壇へのお供え物として「お花」は非常に大切な意味を持っています。
お仏壇へお供えする花は「仏花」と呼ばれ、お仏壇を飾るという意味はもちろん、仏教の考え方とも共通する選び方があります。
仏花についての詳細は以下のページで詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
⑤飲み物
故人が好んでいた飲み物などをお供え物とするのもおすすめです。
例えばお酒が好きだった方へのお供え物であれば、好んでいたお酒を選んだり、詰め合わせのセットなどでも購入しやすいでしょう。
飲み物を選ぶ時の注意点としては、地域や宗派によっては「お酒をお供え物とすることがよくない」という場合があります。
気になる場合にはお供え物を持っていく先の方に事前に確認をしておくと安心です。
お仏壇に毎日お供え物をする場合
世代の変わりや様々な事情によって「お仏壇を引き継いでくれないか?」とお願いされることもあるでしょう。
仮に承諾して、お仏壇だけを引き取って放置してしまっては正しく継承出来たとは言えません。
お仏壇を置いているお家では「御供(ごくう)」と呼ばれる5種類のお供え物を中心に供養をします。
ここからはお供え物の基本となる「御供(ごくう)」についてご紹介していきます。
※多くの地域では一連の「御供」は毎日行うものだとされています
香(お線香、白檀など)
ひとつめの御供は「香」に関する物です。
多くのお仏壇にはお線香を焚く台が一緒に備えられてます。
諸説はありますが、仏様は「香りを召し上がる」という考え方があります。
また、お線香には「浄化」の意味もあるとされており、邪気を払ってよい空気にする役割もあると言われています。
その他、現世とあの世を繋ぐものであるという考え方などもありますので、出来る限りこまめに交換することが大切です。
花(仏花)
2つめの御供はお花であり、いわゆる「仏花」です。
お仏壇に花を飾る意味は様々なものがありますが、仏様が香りを召し上がるというのに合わせて、故人は花の香りを好むと言われています。
また、花には生から死までの様子を表すという考え方もありますので、大切な御供の1つとされています。
ロウソク
3つめの御供は明かりを意味するロウソクになります。
お供え物として明かりを灯すことには、供養をする人にとっての迷いや煩悩を消してくれるという意味があるとされています。
本来、先祖供養をすることは、ご先祖様や仏様に対するものですが、供養という行為が回り回って自分自身にも意味があるという仏教の考え方の1つだと言えるでしょう。
浄水
4つめの御供は水やお茶を意味する浄水です。
浄水は文字の通り、新鮮な水やお茶をお供え物とすることで、心や身体を浄化させるという意味を持っています。
宗派や地域によっては、身体のないご先祖様の心を落ち着かせるという意味もある一方で、一部の宗派では浄水をしないこともあります。
飲食(おんじき)
5つめの御供は仏飯・香飯を意味する食事のお供え物です。
これは、主に仏様に対してお供えするものであり、家族と同じ食事をお供えすることが一般的です。
お仏壇には「仏飯器」と呼ばれる器があり、これに炊きたての白米などを軽くもってお供えします。
仏飯を供えるという事は、あらゆる感謝に繋がるものであるとも言われており、先祖供養における大切な要素の1つになっています。
お仏壇へのお供え物は先祖供養の大切な習慣
今回はお仏壇へのお供え物の選び方から基本的な考え方までをまとめてご紹介してきました。
最後に大切なポイントをまとめてみましょう。
【お仏壇のある家に持っていくお供え物の選び方や種類】
①現金(御供物料)
四十九日法要やお盆などのお供え物としては「現金」を用意することがあり、自分自身の年齢に合わせて準備するのが礼儀の1つ
②果物
「丸い果物」が縁起が良いとされ、数は奇数で合わせるのが一般的
③お菓子
故人の好きだったお菓子をお供え物とすることも良いが、果物と同様に丸いものが縁起が良いとされている
④お花
お仏壇へお供えする花は「仏花」と呼ばれ、お仏壇を飾るという意味はもちろん、仏教の考え方とも共通する選び方がある
⑤飲み物
故人が好んでいた飲み物などをお供え物とするのもおすすめ
【お仏壇に毎日お供え物をする場合】
<香(お線香、白檀など)>
仏様は「香りを召し上がる」という考え方があり、お線香には「浄化」の意味や邪気を払ってよい空気にする役割もあると言われている
<花(仏花)>
仏様が香りを召し上がるというのに合わせて故人は花の香りを好むと言われている
また、花には生から死までの様子を表すという考え方もある
<ロウソク>
お供え物として明かりを灯すことには、供養をする人にとっての迷いや煩悩を消してくれるという意味があるとされている
<浄水>
新鮮な水やお茶をお供え物とすることで、心や身体を浄化させるという意味がある
<飲食(おんじき)>
主に仏様に対してお供えするものであり、家族と同じ食事をお供えすることが一般的、仏飯を供えるという事は、あらゆる感謝に繋がるものであるとも言われている
普段からあまりお仏壇に向かい合う習慣がないという方は、そもそもお供え物をする意味も理解しにくい部分があるかもしれませんが、ご先祖様の供養は、先祖代々受け継がれていく習慣の1つです。
実際には物やお金といった「形」としての意味よりも、本来はこれらのお供え物に込められた「気持ち」がもっとも大切なものなのです。
お供え物を通して供養をすることで、ご先祖様や仏様はもちろん、自分自身とも向き合うキッカケをつくることが出来ます。
今までにお仏壇にお供え物などをしたことがない、という方は、ぜひご先祖様や仏様に対して感謝を示す機会を作ってみてはいかがでしょうか?