お墓が自分の住んでいる地域から離れていたり、普段のお仕事や生活に追われてしまい、お墓参りの時間が年末年始などの休み期間にしか取れない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
また、年末はまだしも、お正月のようなおめでたい時期にお墓参りをすることは駄目なんじゃないか?と考えたり、縁起が悪いと思ってしまう方も少なくありません。
そこで、本記事では年末年始のお墓参りや先祖供養に関しての是非や注意点について紹介していきたいと思います。
「お正月か年末年始にお墓参りしようかな」と気になっている方は参考にしてみてください。
そもそも年末年始にお墓参りしても大丈夫?
お墓参りや供養という習慣については、日本全国の各地域や菩提寺などの宗派、昔から引き継がれているしきたりなどによっても変わることがあります。
しかし、日本では主流の仏教的な考えにおいて「お正月などのお墓参りを禁止する」というルールは一切存在していません。
むしろ、先祖供養をするという行動そのものは推奨されていますから、せっかく休みが取れたり、タイミングが取れたのであれば、お墓参りでご先祖様の供養をすることはとても大切なことなのです。
しかし、お正月や年末年始などの「おめでたい」とされている期間にお墓参りをするという行為は、地域やしきたりの中で回避されていることもあります。
ここまでのポイントまとめると、、
仏教の観点からすればお正月や年末年始のお墓参りという行為には何も問題はないとされていますが、昔から受け継がれてきた習慣の中では「良くないこと」であるとされることもある、ということになります。
では、ここからは実際に年末年始のお墓参りに関して、どういった問題や考え方があるのかを順番に紹介していきますので、参考例として読んで頂ければと思います。
年末年始にお墓参りをしてトラブルになる!?
先に紹介したように、地域によってはおめでたいお正月などにお墓参りなどをすることで親戚同士などでトラブルになってしまうというケースもあります。
要するに、仏教の考え方を中心にお墓参りや供養に向き合っているのか、地域のならわしなどで決められたルールを優先しているかによって「お正月」「年末年始」などの期間がお墓参りをしてもよいか、するべきではないのかという考え方や判断に違いがあるということです。
自分自身や家族が良いと考えていても、お正月や年末年始は親戚なども集まりやすい時期ですよね。
お墓参りへの考え方は人それぞれ違いますから、こういったタイミングでは周囲への配慮も必要なのかもしれません。
ご先祖様を供養するのに、その子孫である私達の仲が険悪になってしまっては元も子もないからです。
あくまでも、お墓参りは自由意志の上でするべきですが、こういった協調性も考慮する必要があるかもしれません。
管理墓地や霊園でお墓参りをする場合の注意点
もし、親戚同士などでお墓参りそのものには意見の相違がなかったとしても、年末年始や三が日などは管理墓地や霊園の空いている時間が変わっていたりする可能性も考えられます。
お墓参りをするときにはお供え物なども含めて荷物も多くなりがちです。
「せっかくお墓参りに来たのに中に入れなかった」
「準備したお供え物が駄目になってしまった」
ということがないように、管理墓地や霊園にお墓がある方は先に開園時間を確認をしておきましょう。
特に、2020年以降では新型コロナウイルス感染症対策などの影響によって開園時間をずらしていたり、時間を短縮していることも考えられます。
もちろん、親戚同士など大勢でお墓参りをする場合には、マスクなどもしっかりと着用しましょう。
お正月の先祖供養でタブーとされる「ついで参り」とは?
お正月のお墓参りで良くないとされる行為に「ついで参り」と呼ばれるものがあります。
ついで参りとは、簡単に説明しますと、買い物やお出かけなどのついでにお墓参りをすることを指した言葉です。
本来、先祖供養であるお墓参りの日にはそれ自体を最優先すべきであって、足掛けのようにお墓参りをすることはマナー違反であるという考え方から「ついで参り」は良くないと思われることも多いのです。
しかし、近年では、ついで参りという先祖供養の方法にも議論があります。
「ご先祖様への供養の気持ちがしっかりとあって、限られた時間でお墓参りをするのだから問題ない」という考え方もあれば、やはりこういった供養は失礼にあたると考える人もいるのです。
お墓参りではご先祖様、仏様、神様などへの尊敬や感謝などが問われることから「年末年始に限らず、お墓参りをする場合、その日は他の予定を一切入れない」という地域もあります。
ちなみに、筆者の地元であれば「お墓参りの行き帰りには、どこにも寄り道をしない」という地域独特のルールがあり、お墓参りをする時はお墓に行って掃除やお参りをして家に帰るまでの間は一切の寄り道をしません。
こういったローカルルールや地方の風習は受け継がれるものですから、なるべく尊重しつつ余裕を持ってお墓参りをした方が良いでしょう。
年末年始のお墓参りでは気を付けたい防寒対策
春や秋などの時期であれば、質素な格好でお墓参りを一通り済ませることも出来ますが、年末年始に限ってはそうとも言えません。
これも地域差はありますが、お墓がある場所は街から少し離れている場所であることが多く、特に山の中のお墓や霊園などである場合は地上との気温差が激しいものです。
自宅で外の温度を感じている時の感覚と、山の中での体感気温にはかなり大きな差があります。
さらに、山の奥や上であればその分だけ天候なども変わりやすいので、必ず防寒対策をしておきましょう。
お墓参りではお花立てのお水を変えたり、墓石を掃除したりと、お水を使用することも多くなります。
多くのお墓では、墓地専用の水道を利用することになりますが、水道に引かれているお水は地下水であることも多く、これもかなり冷たいものです。
お墓参りに行って体調不良になった、というようなことにならない為にも、防寒着の準備や雨対策の折りたたみ傘の準備、水などを触る時に使えるゴム手袋など、寒さ対策はしっかりとしておきましょう。
初詣とお墓参りを同日にしても良い?
お正月と言えば、お墓参りのイメージよりも初詣のイメージの方が一般的には強いでしょう。
初詣は新年の願いや決意を神様に報告してお祈りする昔からの風習です。
では、この初詣とお墓参りは同日になっても良いのでしょうか?
こちらも諸説ありますが、結論から言えば同日にお参りすることは良くないことだとされています。
初詣とお墓参りを同日にすれば、ついで参りになるということもあるのですが、それ以外にも様々な考え方が存在しています。
神社とお寺では祀っている対象が異なる
神社仏閣巡りという言葉があるように、神社とお寺は同一視されやすいのですが、実は似ているようで全く違います。
まず、神社とは古来から日本に根付いている「八百万の神々」を祀っている場所であり、宗派としては「神道」や「古神道」と呼ばれるものです。
一方でお寺とは仏様を祀っている場所であり、こちらは「仏教」が由来となっています。
本来、もっと昔にさかのぼると、日本は宗教に関しては信仰の自由も広く「神仏習合」という文化がありました。
神仏習合とは神様仏様のいずれも信仰してよいものであるという意味合いで、大きな区別をつけていなかった文化なのです。
これが明治時代に入って以降に、新しく神仏分離令というものが制定されました。
言葉の通り、神様は神様として、仏様は仏様として信仰の対象にすべきだという考え方です。
最大の難点は、初詣はおめでたいものであるという考えと、お墓参りはおめでたいものではないという価値観の相違にあるのです。
地方によっては、お墓参りで浴びた死などに関する空気を、初詣に持ち込むべきではないという考え方もあります。
この死などに関する空気を神様が嫌うという考え方などもありますので、初詣とお墓参りは同日にすべきではない、という考え方が生まれたとも言われています。
余談にはなりますが、初詣の場合には神社に行ってもお寺に行っても問題ないそうです。
こちらは両方とも祝いやおめでたいという要素が大きく「負の性質がない」からだとされています。
年末年始のお墓参りは何日に行くのがよい?
ここまで紹介してきたようにお墓参りをする時には、「ついで参り」は駄目であるという考え方や「初詣とお墓参りが重なることは良くない」という考え方もありますので、年末年始にお墓参りをする場合には、予めスケジュールを立てておくとよいでしょう。
一般的な感覚としては、年明けの三が日などはおめでたい雰囲気の方が強いですから、理想的なのは12月30日前後までに「お墓参りの日」を決めておけば大きな問題にはなりにくいです。
どうしても年明けにまたがってしまうという場合には、前述の通り【初詣との混同】や【ついで参り】を避けるほうが無難ではあります。
一番良いのは、年内にお墓参りをしっかりとして、新しい気持ちで新年を迎えるという方法ではないでしょうか。
年末年始のお墓参りを止められた場合はどうする?
年末年始のお墓参りについては、非常に色々な意見がありますから、場合によってはお墓参りそのものを止められたという話も珍しくはありません。
冒頭でも触れましたが、仏教上の考え方では「お墓参りを勧めている日」はあっても、お墓参りをしないほうが良いという考え方は存在しません。
しかし、お墓参りによる先祖供養という倫理的には正しい行為を止めるにはそれなりの理由もあると考えられますよね。
繰り返しにはなりますが、止めるにはここまで紹介したような理由や、他にも止めた人なりの考え方があるはずなのです。
ここを押し切ってまでお墓参りをするよりは、自宅供養でも充分にご先祖様は喜んでくれるでしょう。
また、止めようとしている人がお墓の近くに住んでいたり、お墓の管理に関わっている立場であれば、こういった意見は尊重すべきだと言えます。
年末年始のお墓参りは風習に従いましょう
お墓参りをしたいと思える気持ちは先祖供養において大切なことですが、お墓に行かなければ供養にならない、というのは少し違います。
お墓が離れた土地にあったり、普段は行けないなどの理由があったとしても、先祖供養は自宅でも出来ますし、もっとも大切なのは「心」の問題です。
また、その土地で暮らしている方々が守ってきたルールや風習は、ご先祖様から引き継いだものでもあると考えられます。
年末年始にお墓参りをしてはいけない、というルールはありませんが、実際にお墓参りをする場合には、その土地で守られている風習や習慣を尊重した上で検討されるとよいでしょう。