お墓参りに供えるシキミってどんな植物?用途やサカキとの違いをわかりやすく解説

仏花 シキミとサカキ1

ご先祖様にお供えする緑色の葉といえば、シキミやサカキと呼ばれていますよね。

実は両者は名前だけでなく、種類もまったくちがう植物です。

シキミとサカキは何がちがうのか、どこで買うのか、どんなときに供えるのか、疑問点をわかりやすくお伝えします。

目次

シキミとサカキを理解するコツ!

混乱しがちな“シキミとサカキの違い”を明確にするには、頭の中で漢字をイメージするのがコツ。

まずは、サカキを漢字で書くと【榊(サカキ)】ということを頭に入れておくと格段にわかりやすくなります。

【榊(サカキ)】の字は、名字にも使われますから、覚えやすいのではないでしょうか。

ちなみに、シキミは【樒(シキミ)】と書きますが、こちらは無理に覚えなくても大丈夫です。

「榊(サカキ)」の漢字がわかれば、シキミとサカキ(榊)の使われ方のちがいを理解するのはとても簡単です。

・シキミ(樒)…仏壇に供える
・サカキ(榊)…神棚に供える

木へんに「神」の旧字体を書くサカキ(榊)は、漢字が示す通り「神事」に用いられます。

一部の仏教の宗派ではサカキを供える例外もありますが、まずはこのように覚えておけば、混乱はなくなりそうです。

続いて、シキミとサカキのちがいを具体例を挙げながら紹介していきます。

シキミとサカキの見分け方

<シキミ(樒)>

仏花 シキミとサカキ1

   ・葉が放射状に広がる
   ・サカキより薄い緑色
   ・薄く平べったい葉
   ・強い香りを放つ


<サカキ(榊)>

仏花 シキミとサカキ1

   ・葉が同じ方向を向く
   ・シキミより濃い緑色 
   ・肉厚の葉
   ・香りはない

違いをまとめると、「葉が広がっているのがシキミ」、「濃い緑の葉で、平べったいのがサカキ」といえます。

シキミとサカキの由来

それでは、シキミとサカキのそれぞれの由来と、どんな植物なのかをみていきましょう。

シキミ(樒)の由来

シキミという名前の由来は「悪しき実(あしきみ)」から来ているといわれています。

「悪しき実」という名は、実に毒があることからついたのだそうです。

シキミの毒は実だけでなく花や葉にもあります。

他の説としては、四季を通して芽吹くことから、“四季の芽”が転じて「シキミ」とついたといわれています。

シキミが本来の名前ですが、なまって「シキビ」ということもあります。

また、はじめに“御”をつけた「オシキミ」「オシキビ」と呼ばれることもあるようです。

シキミ(樒)ってどんな植物?

シキミは、マツブサ科シキミ属の常緑樹、名前の由来にもある通りシキミには毒が含まれます。

食用にしない限り心配はいりませんが、強い毒がある実は特に食べたりしないよう気をつけてくださいね。

仏花の知識がある人は、毒のあるものを仏様に供えていいの?と不思議に思うかもしれません。

たしかに、仏様にお供えする仏花には「有毒なものは避ける」という決まりがあります。

では、なぜ、シキミは有毒なのに仏様にお供えしてもよいことになっているのでしょうか?

これには、土葬だった時代の事情が関係しています。

土葬の場合、埋葬の際には、どうしても臭いが発生してしまったり、野犬や動物がお墓を掘りおこしたりしてしまうことがありました。

そのような問題を避けるために、シキミが大きな役割を果たしたのだそうです。

シキミには毒があるのと同時に、殺菌作用や強い香りがあります。

シキミを置くと、毒を嫌がることから野犬が来ることを防止でき、殺菌作用と強い香りは臭いを軽減するのに役立ったということです。

火葬になった今では、こうした問題はなくなりましたが、シキミを供える慣習は残っています。

お寺や墓地には、シキミが植えられているところが多くありますが、お寺や墓地のイメージがあるためか、シキミは庭木としてはあまり見られません。

サカキ(榊)の由来

サカキの漢字「榊」は、もともとあったサカキという名前に合わせて、日本でつくられた国字なのだそうです。

木へんに“神”の旧字体と書くので、わかりやすいですよね。

では、どうして「サカキ」と呼ばれるようになったのでしょうか?

サカキの由来には、いくつかの説があります。

「神と人間の境(サカイ)にある木」という説や、サカキが常緑であることから「いつも緑色で栄える(サカエル)木」という説です。

また、サカキは「賢木」と書くこともあります。

「賢しい(さかしい)」には「賢(かしこ)い・気丈である・健康である」などの意味があります。

樹木であるサカキが賢いというのは不思議な気がしますが、「神聖な」というニュアンスがあるようです。

サカキ(榊)ってどんな植物?

サカキは、サカキ科サカキ属の常緑樹で、日本では神事に使われたり、神棚に供える植物として有名です。

そのため、サカキは神社には必ずといっていいほど植えられていて、神社の周囲に生け垣として整えられていることもあります。

ただ、一般的には手に入りにくいことから、関東地方などでは、神棚用にはサカキの代わりにヒサカキという別の種類の木が使われることもあるのだそうです。

葉ばかりが注目されるサカキですが、6月から7月頃には白い小さな花が咲きます。

「栄える木」という名前は縁起も良く、日陰にも強く丈夫な性質のため、庭木として植えられることもあります。

仏花とシキミ(樒)はどうちがうの?

仏花 シキミとサカキ1

仏様にお供えするのは、シキミではなくお花にしているという方も多いのではないでしょうか?

実際、お花屋さんやスーパーマーケットでもシキミやサカキを置いていないということもあるようです。

ではなぜ家庭ではシキミではなく仏花を供えるかという答えは、仏教にあるようです。

四十九日まではシキミ(樒)?

仏教では、四十九日間かけて亡くなった方が審判を繰り返し受け、認められると極楽浄土に行くことができるといわれています。

四十九日が経つまでは、自宅には祭壇がしつらえられます。

この祭壇は「後飾り(あとかざり)」や「後飾り祭壇」といい、関西では「中陰壇(ちゅういんだん)」とも呼ばれます。

後飾りには、仏飯、お水、お菓子などのお供えものと一緒に、仏花やシキミもお供えされます。

細かな決まりはなくなりつつありますが、四十九日を迎えるまでは、仏花の色を白一色にしたり、仏花ではなくシキミを供えるという慣習も残っています。

これは、美しい花をお見せしてこの世に未練を持たせ、極楽浄土へ行くことを妨げてはいけないという配慮なのだそうです。

四十九日まではシキミを一本だけ供える「一本シキミ」と呼ばれる風習もあります。

「一本シキミ」は、亡くなって間もない方にお供えするものなので、一本だけ植物をお供えすることは“忌みごと”ととらえられることもあるようです。

四十九日法要が終わった後には成仏されていますので、この世に未練を持たせてしまう心配はなくなります。

お供えする花や植物は今度は「仏様の代わり」という意味合いに変わるため、色鮮やかな花を供えてもよいとされます。

家庭では、多くの場合、四十九日は終わっているため、シキミや白一色の仏花ではなく、入手しやすい色とりどりの仏花を供えることが多いのでしょう。

シキミ(樒)が欠かせない宗派や地域

仏教の中でも日蓮正宗は、シキミをお供えすることで知られています。

お釈迦様にゆかりのある「青蓮華(ショウレンゲ)」の葉とシキミの葉が似ていることが、その理由の一つだといわれています。

また、鑑真が仏教の宗派、律宗を日本に伝えたときに、一緒にシキミを日本にもたらしたという説もシキミの重要性を高めているようです。

ただし、これは言い伝えで、実際には日本にはもともとシキミがあったともいわれています。

日本国内でも関西地方では、仏花よりもシキミを供える傾向があり、葬儀でも花輪ではなく、シキミを大きな輪にしたものが用意されます。

また、関西ではお墓参りのときや仏壇にもシキミを供えることが多いようです。

シキミ(樒)やサカキ(榊)はいつでも買えるの?

流通の発達した今の時代には、需要があれば、シキミもサカキもお花屋さんやスーパーに並ぶはずですが、どちらも普段はあまり見かけません。

ただし、関西では、シキミは日常的に売られているという情報もあります。
  
シキミやサカキが手に入りにくい理由としては、仏様に日常的にお供えするシキミは仏花で代用ができることがまず挙げられます。

「お墓参りにはシキミ」といった家や宗派の決まりがある場合も、お墓に隣接するお寺や売店で手に入るので、シキミがお店にまで並ぶことが少ないのかもしれません。

また、お店でサカキがあまり見られないのは、神棚にお供えするサカキの代わりに、造花のサカキが普及した影響もあるのかもしれませんね。

それでも、多くの人がお墓参りをする春と秋のお彼岸シーズンには、シキミやサカキが店頭で見られるようになります。

この時期には、シキミやサカキも、仏花と同じように花屋やスーパーでも売られていることが多いようです。

まとめ

シキミとサカキ、何も知らないと苦手意識を持ってしまいますが、サカキの漢字「榊」を覚えておけば大丈夫です。

「サカキ(榊)は神がつくから神様のためのもの、シキミ(樒)は仏教」という覚え方で、だいたいは対応できそうですね。

最後にそれぞれの特徴を簡単におさらいしてみましょう。

【シキミ(樒)】

  • シキミ(樒)には毒があるのと同時に、殺菌作用や強い香りがあり、土葬だった時代に臭いを軽減するのに役立っていた、火葬になった今でもシキミ(樒)を供える慣習は残っている
  • 仏教では、四十九日が経つまでは自宅には祭壇がしつらえられ、仏飯、お水、お菓子などのお供えものと一緒に、仏花やシキミ(樒)も供えられる
  • 仏教の中でも日蓮正宗は、シキミ(樒)をお供えすることで知られている
    また、関西地方では、葬儀やお墓参り、仏壇にも仏花よりもシキミ(樒)を供える傾向がある

【サカキ(榊)】

  • 神事に使われたり、神棚に供える植物として有名
  • 神社には必ずといっていいほど植えられていて、神社の周囲に生け垣として整えられていることもある
  • 一般的には手に入りにくいことから、関東地方などでは、神棚用にはサカキの代わりにヒサカキという別の種類の木が使われることもある

「シキミ(樒)は仏壇、サカキ(榊)は神棚」というちがいはあっても、ご先祖様の霊にお供えをするという想いは一緒ですね。

ご先祖様に感謝の気持ちを捧げ喜んでいただくために、先祖代々に伝わる風習を知っておくことが大切なのではないでしょうか。

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