お盆に欠かせないお供え物のひとつが「お花」です。
お墓やお仏壇に花を供えるのが一般的ですが、どんな花を選べばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、お盆のお供え花について、よく選ばれるおすすめの花や供え方、贈るときの注意点などについて解説していきます。
ぜひお供えするお花選びの際に参考にしてくださいね。
お盆に供える花とは?
仏教では、「香」「花」「灯明(とうみょう)」「浄水」「飲食(おんじき)」の5つ「五供(ごく)」をもってご先祖様にお供えをするのが基本です。
さらにお盆には、盆棚(精霊棚)や盆提灯などを飾って、あの世から里帰りをするご先祖様の魂をお迎えします。
その際にお墓やお仏壇に供える花を仏花と呼びますが、お盆のお供えは特に盆花(ぼんばな)と呼ぶことがあります。
花を供える理由とは?
花はお墓やお仏壇に彩りを添えるとともに、ご先祖様や故人を供養するためのお供え物ですが、実は仏教と密接な関係があります。
一瞬ともいえる美しい花を咲かせるために、花は厳しい自然環境の中で生きますよね。
その姿が、長い苦行を乗り越えて初めて悟りを開くという仏教の教えと重なるとされているようです。
また、美しく咲いて散っていく姿から、命あるものはいつか枯れてしまうという「無常」を教えているとか。
仏様は食事の代わりに香りを楽しむことから、花の香りを供えたという説もあり、他にもお供えをした人の心も清らかにするという意味もあるそうです。
花の種類と供え方
お墓やお仏壇の左右には一対の花立が備わっています。
そのため、お供え用の花は同じ本数と同じ種類の2つの花束を用意して、一束の花の数は3本・5本・7本など奇数のいずれかに揃えるのが一般的です。
奇数にするのは、割り切れない本数=故人との縁が切れないという考えから、縁起のよい数とされてきたことが由来とか。
花の色は3色(白、紫、黄)か、5色(白、紫、黄、赤、ピンク)でまとめるのが定番です。
ただし、必ずしもこの色にこだわる必要はなく、最近はアレンジの幅も広がってきています。
実は仏教では青(緑) 、黄、赤、白、橙(樺色/赤みがかった橙)の5色が尊ばれる色だとご存じでしょうか。
このことからも仏様の前に飾る花は、色とりどりでも良いということになりますね。
故人が好きだったお花や色がある場合は、好みを優先して供えましょう。
供えるときは、茎を含めた花束全体がひし形になるように整えます。
ひし形にするのは、神事に用いられる榊のような形とするためです。
花を供える向きは、供養する側の心も清めるという意味から自分たちの方に向けるのが基本とされています。
近年では、花束のほかにも、花瓶を用意しなくてもそのまま飾れるフラワーアレンジメントや加工して長持ちさせるプリザーブドフラワーなどをお供えすることも一般的になってきているようです。
ただし、仏花は生花をお供えするものという考えもありますので、できれば生花をお供えすることをおすすめします。
お盆のお供えにおすすめの花9選
それでは、お盆にお供えする花はどんなものが良いのでしょうか?
ここではお供えに選ばれる代表的なお花についてご紹介します。
<菊>
お盆のお供え用の花といえば必ずといっていいほど用いられるのが菊。
菊は、花持ちも良く、枯れたときにも花びらが散りにくいため周囲を汚しにくいのが特徴です。
悪い気を払うとされ、皇室の紋章にも使われている高貴な菊は古くから仏花として使われてきました。
さまざまな種類があり、花の色も多いので、故人の好きだった色を入れることもできそうですね。
花言葉:「高貴」「清浄」「真実の愛」
<リンドウ>
青紫色で釣鐘のような形をしたリンドウは、清楚で気品があり、お盆にお供えする花としてよく選ばれています。
暑さに強くとても丈夫なため、お供えしたあともすぐに枯れてしまうことが少ないことも魅力のひとつです。
花言葉からも、故人を偲ぶ花としても適していますね。
花言葉:「誠実」「悲しみに寄り添う」
<キンセンカ>
キンセンカは黄色やオレンジ系のあたたかい色味で、派手すぎない華やかさを添えることができます。
また、キク科の花のため花持ちも良く、丈夫なのも仏花に用いられる理由です。
故人を偲ぶ気持ちを表す花言葉からもお供え用のお花として人気があります。
花言葉:「慈愛」「別れの悲しみ」
<スターチス>
スターチスは、水分が少ないためすぐに枯れにくく、暑さに負けない花としてお盆のお供えによく選ばれています。
散りにくく、小花が集まったボリュームのある姿が魅力的ですね。
スターチスの花色は濃い紫をはじめ、薄紫、白、黄、ピンクなど種類が豊富です。
花言葉:「変わらぬ心」「途絶えぬ記憶」
<トルコキキョウ>
トルコキキョウも暑さに強く、バラに似たボリュームのある華やかさが美しい花です。
紫色や白色の一色のものもありますが、花びらが紫色で縁どられた白色のトルコキキョウが仏花として多く使われています。
落ち着いた雰囲気なので、他のお花とも合わせやすいのではないでしょうか。
花言葉:「清々しい美しさ」「優美」
<カーネーション>
カーネーションは、母の日に贈るというイメージが強いですが、お盆などに仏花として供えられ、白いカーネーションがよく使われています。
他にもピンク・グリーン・淡いオレンジなどの色が用いられるようです。
花言葉から、故人への変わらぬ愛情を伝えるのにぴったりですね。
花言葉:「無垢で深い愛」「感謝」「暖かい心」
<ユリ>
お盆や新盆などには、白いユリが多く使われています。
お盆は、帰ってきたご先祖様を手厚くおもてなしする行事ですから、気品のあるユリの咲く姿が仏前や墓前には似合いますね。
また、長持ちする品種が多いのでお供えとして重宝されています。
より長持ちさせたい時は、花粉を取ってしまうのがおすすめです。
花言葉:「純潔」「無垢」「威厳」
<胡蝶蘭>
お祝い事に贈るイメージが強い胡蝶蘭ですが、実は花持ちの良さと花粉の落ちにくさなどから、仏花としてふさわしいとされています。
また、上品で華やかな姿からも、お盆に供える花としてよく選ばれています。
切り花でも2週間くらいは咲いてくれるので、お盆の間はキレイな花を楽しめますよ。
また、特に白い花のみをお供えすることが多い新盆には、格式高い胡蝶蘭が贈られることも多いです。
花言葉:「清純」「純粋な愛」
<ミソハギ>
ミソハギは、湿地帯に多く見られる紫色の花で、禊(みそぎ/身の汚れや穢れをはらうために水を浴びて体を洗い清めること)に古くから用いられてきたとか。
そのため、漢字では「禊萩」と表され、お盆に飾る盆棚(精霊棚)に供えられるお盆には欠かせない花となっています。
亡くなった人の喉の渇きを抑える働きがあるという説や、お供えすることで現世での穢れや罪を洗い流し、天国へ行けるようにという意味が込められているという説があるそうです。
花言葉:「悲哀」「慈悲」「純真な愛情」
いくつかの花をご紹介しましたが、他にも仏花として用いられている花が多くあります。
もし故人が好んでいた花があれば、そのお花を供えてあげるのが何よりの供養となるのではないでしょうか。
新盆の場合は白い花をお供えする
故人が亡くなって四十九日が過ぎたあと初めて迎えるお盆を、初盆(はつぼん・ういぼん)、地域や宗教によっては新盆(しんぼん・にいぼん・あらぼん)などと呼んだりします。
新盆にお供えする花は、白で統一するか、白を基調に控えめな淡い色調でまとめられたものが選ばれる傾向があります。
お盆によく使われる花などから白を基調にして選べば問題ありませんが、地域の習慣には違いがありますので、悩むときにはお花屋さんに相談しましょう。
お盆のお供え花を贈るときに気をつけたいこと
お盆には、帰省することができない実家や、親しかった故人のお宅へ花を贈って故人を偲びたいということがありますよね。
そんな時は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
まず相場ですが、5000円〜10000円程度となっています。
ちなみに新盆は、お花の相場も通常よりも高めになりますが、贈り先の負担にならないように気をつけましょう。
贈るタイミングはお盆に入る前がよいとされています。
お盆の時期が地域によって異なることもあるので、あらかじめ確認してから贈ると良いですね。
また、先方がご在宅の日時を確認したうえで発送しましょう。
その際は、花に込めた想いがより伝わるように一言メッセージを添えることをおすすめします。
自分でも用意できますが、お店のサービスでメッセージカードを付けてもらえることも多いので利用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、お盆にお供えする花について解説してきました。
最後に大切なポイントを振り返ってみましょう。
【花の種類と供え方】
- 花は同じ本数と同じ種類の2つの花束を用意し、一束の花の数は3本・5本・7本など奇数に揃えるのが一般的
- 花の色は3色か、5色でまとめるのが定番だが、故人が好きだったお花や色がある場合は好みを優先
- 花束全体がひし形になるように整え、供える向きは自分たちの方に向けるのが基本
- 近年では、花束のほかにもフラワーアレンジメントやプリザーブドフラワーなどをお供えすることも一般的になっている
【お盆のお供えにおすすめの花】
菊
リンドウ
キンセンカ
スターチス
トルコキキョウ
カーネーション
ユリ
胡蝶蘭
ミソハギ
【花を贈るとき気をつけたいこと】
- 相場は5000円〜10000円程度(新盆は通常よりも高め)になるが、贈り先の負担にならないように気をつける
- 事前にお盆の時期、先方がご在宅の日時を確認したうえで発送する
お盆にお供えする花に正解はありませんから、亡くなった故人やご先祖様のことを想いながら、感謝の気持ちを込めてお供えし供養したいものですね。