一般的に身内の方が亡くなったりすると、家族や親戚などのお墓に入るというイメージが強いものですが、近年増えてきたのが、遺骨を自宅に置いたまま供養をする「自宅供養」という方法です。
自宅供養は、通常の供養方法と比べるとコストもあまりかからないため、金銭的な負担を遺族にかけたくない方や、自宅から離れた場所に置かれることをあまりよく感じない方などが生前に遺書などで指定される場合もあります。
自宅供養と呼ばれる方法にも種類がありますので、この記事では自宅供養の具体的な種類や内容について紹介していきます。
自宅供養の概要
通常、お葬式などが終わって四十九日を過ぎるか、一周忌を迎えると遺骨はお墓や永代供養墓などに納骨することが基本です。
それに対して自宅供養とは、納骨をせずに自宅に遺骨を保管したまま供養していく方法のことです。
現代のように少子化が進んでいくと、新しくお墓を建てるという場合には金銭的にも管理の面でも大変だという問題があります。
参考までに、お墓を新しく建てるという場合100万円以上かかることも珍しくありません。
自宅供養ではお墓を必要としないため、このようなコストの一切が抑えられます。
様々な事情がある中、1つの供養方法として近年は増えてきているのが自宅供養という選択肢なのです。
自宅供養と手元供養に違いはある?
自宅供養と似たような供養の方法として「手元供養」があります。
遺骨を手元に置いておく、ということに関しては大きな違いはないのですが、自宅供養では遺骨を分けず、1つの場所で供養するのに対して「手元供養」と呼ばれる方法は遺骨を加工したりして、分骨して置いておくという特徴があります。
手元供養の詳細については以下の記事を参考にしてみてください。
様々な方法がありますが、自宅供養の場合は遺骨を分けない、手元供養では遺骨を分けることもある、と考えておくとよいでしょう。
自宅供養は法的に問題ない?
自宅供養は、骨壷などを自宅に保管することが前提です。
遺骨を自宅に保管し続けるということは特に問題ありませんが、遺骨を自宅の庭などに埋めるといった「埋葬行為」は違法となります。
お墓を立てて良い場所や埋葬場所に関しては「厚生労働省」が定める「墓地、埋葬等に関する法律」というものがあります。
管理墓地ではなくとも、街の中や山中にお墓が沢山集まっている場所などを見かけることがあると思いますが、これは行政によって「お墓を建てたり埋葬に使用してもよい土地」と定められた場所になっているからなのです。
それ以外の場所は私有地(自宅の庭や所有している土地)であっても法的に認められていません。
専門用語では分かりにくい部分もありますので、簡潔にすると、
- 骨壷の状態で自宅に保管しておく・・・問題なし
- 骨壷を庭などの敷地に埋める・・・埋葬行為にあたるので違法
だと覚えておくと分かりやすいです。
出典・参考元:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
自宅供養の種類や方法について
自宅供養では「埋める」という行為は前提にしておらず、自宅に骨壷を保管しておくことが原則ということですね。
これらを踏まえて、自宅供養にはどのような種類や方法があるのかを解説していきます。
骨壷を安置出来る場所に保管する
火葬後に納骨された骨壷を持ち帰って、自宅にそのまま保管する方法です。
仏間やお仏壇がすでにあるという場合にはその室内に安置される方が多いですが、自宅が全て洋室であるという場合には、寝室やクローゼット、リビングなどに保管される方もいます。
お子様などがいる家庭では誤って骨壷を落としたり、割れたりしないように場所を決めるのも大切です。
故人が住んでいた自宅であれば、元の自室に保管するということもあります。
収骨可能な仏壇を購入して保管する
近年のお仏壇には収骨可能なものも増えてきており、場合によっては新しくお仏壇を購入して骨壷を保管するという方法もあります。
骨壷をそのまま安置しても問題はないですが、見た目などが気になったり置き場所に悩む場合には選択肢の1つとなりますね。
普通のサイズの仏壇から、少し小さな仏壇など様々な種類のものが増えてきていますので、仏具店などに相談してみましょう。
四十九日用の祭壇をそのまま使用する
火葬が終わって四十九日は自宅に「後飾り祭壇」を 置きますが、通常は四十九日が終わると祭壇を片付けます。
ただ、後飾り祭壇は骨壺や白木位牌、遺影やお供え物をして置いておくものなので、四十九日を過ぎた後もそのまま供養棚として利用することが出来ます。
コストもかからないので、お仏壇の代わりにする方も多いようです。
骨壷を保管する時の注意点について
どのような安置の方法にするかは人それぞれ、環境に合わせることも大切ですが、骨壷を保管するために注意点もあります。
いくつかの例を紹介しておきますので、自宅供養を検討している方は参考にしてみてくださいね。
骨壷は湿気を避けて保管する
骨壷は焼かれた後には滅菌状態にありますが、水分などに触れると稀にカビが生えたりすることがあります。
そのため、出来る限り通気性が良く、湿気のたまらない場所に置いておくことが求められます。
また、遺骨を素手で触れたり、骨壷を開けることも湿気を取り込む原因になりますので気をつけましょう。
将来的な遺骨の供養方法も考えておく
自分の世代で自宅供養をすると決めた場合でも、次の世代へ引き継ぐときにはどのように遺骨を供養するのかも考えておかなければなりません。
先祖供養は代々引き継がれるものですから、子どもに引き継いでもらえるのか?それとも自宅供養は自分の世代だけで終わらせるのかといったことまで視野に入れておく必要があります。
自宅供養から移行する方法には、永代供養墓などに管理を依頼する、または散骨をするなどの方法が考えられるでしょう。
いずれは自宅供養で保管している骨壷もしっかりと供養先を決める必要があるということですね。
自宅供養をするメリットについて
さて、自宅供養を選択するメリットについて、いくつかのポイントを紹介していきます。
コスト面での負担が大きく減る
最大のメリットとしては、お墓を建てることやお墓を管理する供養に比べるとコスト面を大きく減らすことが可能です。
極端に言ってしまえば、骨壷を自宅において保管しておくだけであれば一切お金はかかりません。
他に親族などいないという場合には余分な金銭的負担もなく、供養することが出来ます。
いつでも供養することが出来る
自宅供養をしていると、お墓に出向いたりする必要も一切ありません。
このため、季節などを選ばずいつでも供養することが出来ます。
一般的に「お参り」の全てを自宅で完結出来ることから、供養という行為が身近になります。
安置の仕方にもよりますが、お供えする仏花を替えたり、お供え物などもお墓とは違ってそのまま置いておけます。
お手入れなどを考えると、お墓とは違って毎日「お参り」することも可能ですから、先祖供養という習慣が身に付くという意味でもメリットはあるでしょう。
自宅供養をするデメリット
自宅供養をする唯一のデメリットとも言えるのは、周囲の理解を得られるかどうかということです。
まだ自宅供養が一般的に認知されているとは言えませんので、親族の中には「納骨しないとよくないよ」とアドバイスされることもあるかもしれません。
ちなみに、仏教の基本的な考え方として「納骨しなければ成仏出来ない」ということはありません。
これはお墓に納骨をした場合でも同じですが、魂はその場に留まらないという考え方があるので、仏教的な観点では問題視されないということです。
ただし、供養に関しては人によって考え方が違うため、トラブルにならないように配慮する必要があるでしょう。
まとめ
ここまで供養の方法の一つ、自宅供養の具体的な種類や内容について紹介してきました。
最後に、大切なポイントを一緒に振り返ってみましょう。
【自宅供養とは?】
- 納骨をせずに自宅に遺骨を保管したまま供養していく方法のこと
- 手元供養との違いは、自宅供養では遺骨を分けない、手元供養は遺骨を加工したりして分骨することがあるということ
【自宅供養の種類や方法について】
- 骨壷を安置出来る場所に保管する
- 収骨可能な仏壇を購入して保管する
- 四十九日用の祭壇をそのまま使用する
【骨壷を保管する時の注意点について】
- 骨壷は湿気を避けて保管する
- 将来的な遺骨の供養方法も考えておく
自宅供養のメリットはコスト面での負担が大きく減ることです。
また、お墓に出向いたりする必要もなく供養することが身近になりますね。
その反面、将来的なことも合わせて考える必要があり、周囲の理解を得られるかどうかというのがポイントになるでしょう。